アンダースタンドメイビー

ジャニーズのこと、好きなこと

「ってあなた」の沼から抜け出せない

 

 

 

SixTONESが、1月6日に初のフルアルバム、1STをリリースした。

 

 

 

ロック、ダンス、ポップス、アイドル、その全ての概念が変わる歴史的1枚

 

と謳われたそれを初めて通しで聴いた時に生まれた感想は、「SixTONESが奏でたい音楽が明確に分かった」というものだった。

 

 

元々、私はSixTONESに対して、伝えることが上手な印象を持っている。

伝えることが上手、というのは説明が上手いということではない。彼らのアピール力、魅せ方が上手だということだ。

 

 

全てにおいてではないと思うが、自分たちが納得していることや自信が持てることに対して、ハッキリと肯定し、大切にする人たち。曖昧にはしない。そんな印象だ。

 

 

1STを聴いた時も、同様の印象を持った為、先ほどの感想に繋がる。

正直、私は音楽の細かいことは知識がないため分からない。

しかし、彼らの持つセンスやカッコよさ、技術が映える楽曲ばかりが収録されていると感じた為、SixTONESサイドが自信を持って送り出したアルバムなのだと、すぐに理解した。

 

 

 

 

 

アルバムは全3形態でリリースされている。

原石盤には、ジャニーズJr.時代に歌っていたオリジナル曲が初音源化により収録されている。

音色盤には、メンバー2名ずつによるユニット曲が収録されている。

そして、通常盤には本編に加えボーナストラックが収録。

 

 

 

中でも引きこまれたのは、音色盤に収録された「ってあなた」である。

 

 

 

 

この曲は、メンバーの京本大我くんと松村北斗くんが歌っている。

リリース前、特設サイト*1 で記載された紹介文には、

SixTONESの音楽の屋台骨「高音の京本×低音の松村」の競演で聴かせる"弱い男"を歌ったR&B系バラード

とある。

 

 

京本くんと松村くんという2人が歌う曲というのは、実に興味深いものだった。

というのもこの2人、不仲と言われている。

Jr.時代にSixTONESがアップした動画*2には、2人の不仲説に言及したものが複数上がっている程、彼らの不仲はメンバー、ファン共に定着したものとなっている。

 

 

 


SixTONES 1対1のサシトーク【不仲の噂】京本大我×松村北斗 本当に仲が悪いのか検証してみた

 

 


SixTONES【6人で食事会】1年ぶりで本音告白!!

 

 


SixTONES【ラジオ企画】「すとーんずのらじお」~いない人について本音語る~

 

 

私は2人の関係性を語れるほど詳しくはないが、控え目に言ってもこの2人の間柄は知れば知るほど興味深い。特に、2人はただの不仲ではなく似た者同士の不仲である。だからこそ、2人のユニット曲でどんな魅せ方をしてくれるのか、期待した。

そして何より、この2人を組ませてユニット曲を歌わせる判断をしてくれた制作サイドには、感謝しかない。 ありがとうソニー

 

 

 

 

 

 

 

「ってあなた」を聴いた時は、唸った。

期待を遥かに通り越した何とも言えない名曲が送りだされて、消化できない感情から、唸ることしかできなかった。

 

 

 

曲も良いのだが、もっと良かったのはMVだ。

 

 

 

 

2人はMVで曲の世界観に合わせた演技を披露したのだが、まさかすぎる演出に完全に沼に落とされた。

 

 

何も言わずに、まず見てほしい。

 

 


SixTONES - ってあなた Taiga Kyomoto×Hokuto Matsumura - MV鑑賞会

 

 

 

 SixTONES公式YouTubeチャンネル*3に投稿された、「ってあなた」のMV鑑賞会にて、MVが披露されている。全編ではないが、雰囲気だけでも感じてもらえるだろう。

 

 

このMV、何が面白いって、2人が出演しながら、共演シーンが1シーンもない。

 

 

京本くんと松村くんという、SixTONESの演技派でありビジュアル班の2人がいながら、映像で共演シーンを残さないなんてもったいない。

そういう思いも、もちろんあった。

 

 

しかし、「ってあなた」の紹介文にもあるように、2人はこの作品で"共演"ではなく、あくまでも"競演"した。隣り合わせではなく別々の場所から、同じ空間にいるようにして別の空間を演出し、一つの作品を作ったのだ。

 

 

ややこしい。書いていて、とてもややこしい。

でも、そのややこしさが2人の関係性とリンクしている様で、制作サイドに1枚持っていかれたなと、悔しく思う。

 

 

 

 

 2人の演技は、本当に見応えがある。同じ楽曲の世界観で演技をしているはずなのに、本の僅かに演技が違うだけで、全く異なる世界観になってしまうのかと。

ここからは、そんな2人の演技を噛み砕きながら、世界観について触れたといと思う。

 

 

 

 

 

 

この曲を簡潔にいうと、男性と恋愛関係にある女性が男性の元を離れようとしているのだが、男性はまだ女性に未練があり、感情のやりどころを探している、というようなものだろう。個人的な解釈でかつ抽象的だが。

 

 

 

 

 

 

 

 このMVは、4つの場面で構成されている。1場面ごとに切り取りながら見ていくこととする。 

 

 

 

 

1.別れの始まり

 

京本くんと松村くんは、ベットに腰掛けながら帰り支度をしている女性を見つめているところからMVは始まる。

2人がいるのはホテルの一室。そして相手は同じ女性。

しかし、2人は同じ空間には存在しない。なので、2人は別々の空間・別々の時間で同じ女性と恋愛関係であると解釈ができる。 

 

 

 

帰り支度をする女性を待つまでの間、自分の髪をかき上げ、状況を呑み込めていない様な態度なのが、松村くん。

支度の終わった彼女が、シャツの胸ポケットに紙を入れる為に近づいて来るとすぐに顔を上げ、彼女を見つめる。彼女が一瞬近づいた時は手を触りながら見つめ続けるが、次第に俯き、彼女が離れたのがわかると顔を上げる。その後は、瞬きの数が異様に多い。彼女が出ていく瞬間は、丁寧に見ている。彼女が去り、一人になった空間ではしばし座った状態を保つ。その後、ベットに横たわり背を向けている。

 

一方の京本くんは、支度をしている彼女を待つ間、全て納得しているかのような、無の表情で1点を見つめながら過ごしている。彼女が近づいてもすぐに顔は上げない。それどころか、俯いてしまう。しかし、彼女が顔に触れてくると、すがるように彼女に抱き着き、彼女の方から離れるまでそのままでいる。その後はまた一点を見つめ、彼女が去る最後の瞬間に姿を見る。

彼女が去り、一人になるとすぐにベットに横たわる。手で顔を覆ったり、眉間にしわを寄せて苦しそうな表情を浮かべている。

 

 

 

 

ここまでの2人の演技から、感じ取れることをまとめる。

 

松村くんは、彼女を見つめたり、姿を丁寧に目で追っていることから、彼女に対する優しさを感じる。また、髪をかき上げたり瞬きの数が異様に多いなど、落ち着きの無さが垣間見える。彼女が去ったあとも呆然とする時間があった様子から、別れに至ったという状況を呑み込めない心理状態なのを感じる。

 

 京本くんは、表情が読み取りにくい。基本は一点を見つめ、彼女からも目を逸らしている。しかし、彼女が近づいた瞬間に抱き着いたり、一人の空間で苦しそうに眉間にしわを寄せ表情を崩している姿から、思いの強さを感じ取ることができる。

 

 

 

 

 

2.別れの道程

 

この場面では、女性の運転する車に乗っている。カメラ一面に2人の顔のみが映し出され、目の表情が強調される演出となっている。

 

 

松村くんは、真っすぐ前を見つめながら過ごしていることが多い。その中で溢れてくる涙がこぼれない様に小さく歯を食いしばったり、目線を上にあげて堪えている

 

京本くんは、手で口元を覆い、眉間にしわを寄せた表情でいる。大粒の涙を流しており、無理に堪えようともしていない。前の場面と打って変わって感情丸出しである。

 

 

これより感じ取れること。

 

松村くんは自分より相手を尊重している様に思う。だから、感情を丸出しにはしない。

それは、彼女に対しての愛情表現なのか。優しさなのか。大人な印象。

 

京本くんは、彼女のことを気にしていない。隣にいようが関係ない、自分の悲しさや辛さを丸出しにている。一見、自分勝手な男に思えるが、感情を堪え切れない程に彼女を愛していて、別れの時が近づくほどに冷静さを失っているようにも取れる。

 

 

 

 

 

3.別れの終末

 

この場面では走っていた車が止まり、いよいよ別れの時がやってくる。

2人が車を降りてからの演技もまたそれぞれ違う物語を演出しており、見応えのある場面になっている。あとは、ロケ時に実際に降り出したという雨が、世界観をより儚く、切ない雰囲気へと彩っている。

 

車を降りる前から降りた後も、彼女をずっと見つめ続けているのは、松村くん。

車のドアを閉める瞬間までも見つめ続け、彼女に最後にかけたセリフは「誰の所為って」。

その後は一瞬俯いてしまうが、車が去る瞬間もずっと姿を見続けている。一人になった後は、髪をぐしゃぐしゃにしたり、落胆した様子で立ち尽くす。

 

京本くんは、車から降りるまで一度も彼女を見ようとしない。ドアを閉め、最後に見つめて放った言葉が「さよならって」。

しばらく彼女を見つめているが、何の反応もない彼女を見て堪え切れなくなったように顔を覆い、車から離れる。車が去る瞬間も見ることなく、一人感情と向き合っている。

 

そして2人は、シャツの胸ポケットに彼女が残したメッセージを見つける。

 

 

この場面で注目したいのは、2人の放つセリフ。

これは、音源で2人が担当するパートから切り取られているのだと思う。

 

松村くんの担当するパートでは、

「ぽつりと零した 寂しさに壊れそう 脆いのは誰の所為?」

と歌っている。これがモチーフにセリフになっていると考えると、松村くんと彼女は恋人でありながら寂しさを滲ませあう関係性で、それが別れの要因かもしれないと考えられる。

 

京本くんは、

「消えそうな 声が届けば最後に さよなら 言い捨ててやりたいのに」

と歌う。消えそうな声が届けば、と言っていることから、2人の間には既に距離があるのか、それとも、丁寧なお別れができない程のもどかしい関係性なのか、と想像する。

そういう状況でさよならという言葉を伝えられてしまった、胸が引き裂かれるような辛さを感じ取れる。

 

 

 

 

4.別れの真実

 

この場面が、MVのラストである。

雨が降り続く中、彼女からのメッセージを見つけた2人が別れの真実を知り、向き合うシーンとなっている。

 

 

松村くんは、紙を見つめた後路上に跪き、泣き出している。その後、一度大きな声で叫ぶと、紙を地面に投げつけている。

 

京本くんは、紙に書いてあるメッセージを何度も何度も読み返し、我に返ったように彼女の去った道を走り、追いかける。

 

 

 

最後にして、2人の別れの真実と彼女との未来が異なるのではないかと予想できる仕上がりになっている。やはり、この世界観は沼が深い。

 

 

きっと、松村くんが彼女から受け取ったメッセージは、優しいものだったのではないだろうか。

今までの感謝や、愛情を示してくれるようなもの。それを受け取り、なぜもっと彼女を大切にできなかったのか、愛情を伝えられなかったのかと瞬間的に自分を責め、悲しみを嘆いたのではないか。

全編を通して彼女を見つめる時間が長く、愛情や優しさが垣間見れた反面、自分の持つ感情を彼女に向ける瞬間は少なかったと思う。

松村くんが演じたのは、少し大人な男だ。冷静で、愛情があって、優しくて。でもその完璧さが彼女の寂しさを生み、別れに繋がっていったのか。

とにかく、悔いという感情を露わにしている、松村くんの切ないラストシーン。

 

京本くんは、明らかに彼女を追いかけた為、関係を再構築できる様な、未来あるメッセージを受け取ったことが読み取れる。

京本くんと松村くんの演技で一番対照的だったのは、やっぱり感情表現。

京本くんが演じた男は、感情をとにかく露わにしていた印象で、大人ではなかった。

どこか自分勝手で、でも彼女を離したくはないと必死で。

そういう熱い愛情が、彼女との未来に繋がっていくのではないかと感じる。

降り続く雨の中でも、希望を見つけて走り出す姿はやっぱり自分勝手だけど、きっと彼女もこの男を愛せずにはいられないだろうと感じる、京本くんのラストシーン。

 

 

 

このブログを書くのに改めて「ってあなた」を聴き、MVを見返したが、やっぱり深い。沼が深い。何度でも浸かって、溺れていたいと思うくらい、好きな世界観だ。

そして、こんな風に曲を解釈して楽しめるのは、京本くんと松村くんの普段からの関係性がもたらしてくれたものだからだと思う。

2人が"共演"ではなく"競演"という形を選択したからこそ、異空間での不思議な恋愛ストーリーが完成した。2人が仲良しコンビだったらこんな世界観は作られなかっただろうし、ただの不仲のコンビでもここまでの完成度にならなかったと思う。

これは、普段交わることは少ないが誰より似た者同士の2人が歌い、演じたからこそ出来た作品なのだ。

 

 

 

以前、この曲の考察を書いている人を数人見かけたが、中には三角関係の話なのではと解釈している人もいた。

その解釈も、もちろんできると思う。どちらかが本命で、どちらかが浮気相手、というような。そんな風に解釈できるのも、私の様に別々の物語として解釈するのも、結局は同じ世界観を自分なりに解釈して楽しむことができているのだから良いことだと思うし、そういう風に何度でも噛み砕きなくなる様な、愛すべき楽曲を作ってくれた2人には、感謝したい。

 

 

 

最後に、2人が公式サイトで発表した「ってあなた」に対するコメントを、抜粋して紹介したい。

 

 

京本:歌割りやハーモニーなど、僕達二人の意見も沢山取り入れて頂き、まさに共同作業となった一曲です。MVも、一風変わった演出が施されていて、一度観ただけでは物足りなくなると思います。

 

松村:音楽を耳と心で楽しむだけではなく、仕組みを理解したくなる曲。共通点と相違点の差が激しい二人だからこそできたハーモニーでもあるかと。

 

 

 

【メーカー特典あり】 1ST (初回盤B) (ふた付マルチケースD付)

【メーカー特典あり】 1ST (初回盤B) (ふた付マルチケースD付)

  • アーティスト:SixTONES
  • 発売日: 2021/01/06
  • メディア: CD
 

 

 

 

 

ちなみに、SixTONESがリリースする最新シングル「僕が僕じゃないみたいだ」のMVが、先日YouTubeにて公開された。

これも、最高のアイドルソングであり、心つかまれるMVであった為、後日感想を綴りたいと思う。

*1:

1ST | SixTONES(ストーンズ)ファーストアルバム「1ST」特設サイト - SixTONES 1ST STudio

*2:ジャニーズJr.公式YouTubeアカウントにて、配信済み。現在のSixTONESは、自身の公式アーティストチャンネルをYouTube内に開設している為、ジャニーズJr.アカウントでの配信はしていない。

*3:SixTONES - YouTube